区分所有者が破産して免責決定を受ければ,破産手続開始決定前の管理費・修繕積立金について,請求できなくなります。
免責決定が確定すると,破産者は,「破産債権」について,原則として責任を免れます(破産法253条1項本文)。「破産債権」とされるのは,「破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた」債権に限られます(破産法2条5項)。破産手続開始決定前の法律関係に基づくものであっても,開始決定後の反対給付にかかる債権は,これに当たらないと解されています(『注解破産法【第3版】上巻』116頁)。管理費・修繕積立金の原因たる区分所有関係の発生も,管理規約の設定も,破産開始決定前の出来事ですが,管理費は日々行われる管理の対価としての性質を持ちますので,開始決定後の期間に対応する管理費は破産債権とならず,したがって免責の対象となりません(修繕積立金も実務上,同様に解されています。)。
もっとも,破産管財人が選任された場合,開始決定後の管理費等は財団債権となり(破産法148条1項2号),破産管財人に対する請求が可能です。そのため,開始決定後,破産管財人が区分所有権を放棄するまでの期間に生じた管理費等については,破産管財人が区分所有権を放棄した後であっても,破産者は支払義務を負わない旨述べる裁判例があります(東京高裁平成23年11月16日判例時報2135号56号)。
しかし,管理費等は区分所有権の価値に化体しています。その区分所有権が破産管財人の放棄によって破産者に復帰しているのに,明文の規定も無く免責の対象と認めることには疑問があります。上記裁判例も,高裁の審理では放棄後免責決定までの管理費等の支払義務は争点となっていませんので,高裁判例としては傍論です。