前の記事に書いた事案では,管理組合が施工業者に代金を支払う前に,債権譲渡の書面があるとして「譲受人」への支払いを求める請求を受けていました。
マンション関係に関わらず,会社が危機的状態になるとその債権者が債権の回収を図るため,債権譲渡を受けようとすることは一般的によくある話です。その場合,果たして債権譲渡が有効になされているのか第三債務者(倒産の危機にある会社に対して債務を負っている者)には,判断しかねる場合があります。本件でも,そもそも書面が債権譲渡の趣旨で作られたものとは解しがたい経緯がありました。
しかし,債権譲渡があったとして請求されているのにこれを無視して本来の債権者に支払えば,本件のように「譲受人」から支払いを求める訴訟を提起されることになる危険があります。
このような場合に備えて法律は債権者が誰であるか分からないことを理由として法務局に供託するという方法を用意しています(民法494条)。供託が有効であれば債務は消滅し,履行遅滞の責任を問われることもありません。
もっとも,「債権者が誰であるか分からない」という判断に過失がある場合,供託の効果は認められません。したがって,供託すべきか否か弁護士に相談されることをお勧めします。