管理会社の社員を含めて,一般の方はマンション管理に関わることなら当然に管理組合が訴えることができると考えがちです。ですが,誰が訴えを提起できるのか,という問題は実は結構やっかいです。
訴訟というものは,権利の主体が義務の主体を訴えて初めて勝訴できます。どれだけ言い分が正当であっても,原告が権利の主体でなければ,結局のところ原告の請求は正しくないことになりますので,訴えは退けられます。
この点,マンション管理組合は,たとえば規約に基づく管理費については権利の主体ということができるでしょう。しかし,マンションの建物や敷地そのものについては,管理を委ねられているだけで所有権の主体は個々の区分所有者です。したがって,建物や敷地について不法な使用がなされていることを理由に行為の停止や損害賠償請求を求める,といった場合に,管理組合が権利の主体であると当然にはいえません。少なくとも所有権に基づく請求権という意味では,権利の主体では無いからです。
この点,法律は,「管理者」が訴訟を提起できるものと定めている場合がありますから(区分所有法26条2項,57条3項等),これらの規定を適用できるケースでは管理者(通常は理事長)が個人で原告となって訴訟を提起するのが,(無用の争点を作らないという意味で)適当といえます。