滞納されている管理費について、管理組合が債権放棄の検討を迫られることがあります。滞納額が多額で、物件の価値を超過するようなケースでは、競売をしても買受人が現れないため競売で新しい区分所有者を迎えることも出来ず、管理費が支払われない状態が永続してしまうおそれがあるからです。
さて、管理組合はどのようにすれば管理費債権の放棄を実現できるでしょうか。
この点、区分所有者全員の同意を得る必要がある、との見解を耳にすることがありますが、疑問です。
管理費債権は、管理組合に帰属する債権であって、個々の組合員に持分割合に従って帰属している債権の集合ではありません。厳密には、法人化されていない管理組合は権利の主体になれませんので、「組合員全員に総有的に帰属している」と説明します。要するに、個々の組合員に管理費債権を処分する権限はありません。処分する権限の無い者の全員から同意を得る必要があるとは考えられませんし、逆に全員から同意を得たからと言って、それで放棄できるとする理由は何なのか、よく分かりません。
私は、管理費債権が(上記の意味で)管理組合に帰属する債権である以上、規約に従った管理組合の意思決定手続きに基づいて放棄の意思決定をすれば、放棄できると考えます。ただし、当該組合の規約に照らし、その意思決定が手続的にはもちろん、内容的にも規約に違反しないものでなければならないのはもちろんです。そのため、規約次第で規約改正が必要という解釈はありうるでしょう。