管理組合が管理費滞納者に対して滞納管理費請求の訴訟を提起し、滞納管理費の回収を実現できたとしても、手続を弁護士に依頼したとすれば、手続費用が持出しになってしまいます。そのような事態を避けるためには、標準管理規約にならい、規約に「違約金として」弁護士費用を請求できる旨の規定を設けておくことが必要です。
もっとも、そのような規約を設けている場合であっても、裁判所によっては、請求の全部は認めないことがありました。その背景には、「債権者は、金銭債務の不履行による損害賠償として、債務者に対し弁護士費用その他の取立費用を請求することはできない」とする最高裁の判例(最判昭和48年10月11日裁判集民110号231頁)の存在や、わが国の法制においては弁護士費用は各自負担が原則であることに照らし、上記のような規約の規定を無条件で有効と認めることには抵抗を感じる、といったことがあったものと思われます。
しかし、近時、上記のような規約の規定を「合理的なもの」と論じ、その有効性を正面から認めた高裁判例が出ています(東高判平成26年4月16日判時2226号26頁)。したがって、今後は、規約の有効性に疑念を示す裁判所に対しては、この判例を掲げて説得すべきものといえるでしょう。