最高裁は近時、標準管理規約に準じた規約がある管理組合でなされた理事会決議による理事長の解任を有効と認めました(最判H29.12.18、LLC/DB:L07210099)。マスメディアでも報道されましたので、ご承知の方も少なくないでしょう。
区分所有法は法人化された管理組合における「理事」についての規定を置いていますが、法人化されていない管理組合における「理事」「理事長」については規定していません。他方、区分所有法は、管理組合(区分所有者の団体)を代表し、総会で決定された事項を執行する機関として「管理者」を設けています(区分所有法25条以下)。
これに対し、標準管理規約は、法人化されていない管理組合における組合運営を複数の理事によって構成される理事会が中心となって推進することを予定し、理事の互選によって選出される「理事長」を「管理者」とすることによって、区分所有法の規定と接合させています。
ところが、標準管理規約は、理事の選任・解任を総会の決議事項とし、理事長の選任を理事会の職務として規定しながら、理事長の解任については規定を欠いています。その結果、「選任が理事会の権限なら解任も同様のはず」との解釈と「理事の解任が総会決議事項として明示されていながら理事長の解任について沈黙しているのは、理事長の解任(平理事への降格)についてはこれを予定していない趣旨」との両用の解釈が可能でした。
上記最判は、このような標準管理規約の不備を解釈によって補ったものといえます。今後は、標準管理規約に準じた規約を持つ管理組合においては、理事会決議によって理事長を解任し、新理事長を選出できることが明確となりました。