区分所有法17条1項は、共用部分の「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」変更について規定しています(以下、同項の適用される「変更」を「狭義の変更」といいます。)。具体的には、狭義の変更につき、総会における区分所有者及び議決権の各4分の3以上の特別多数決議を要するものとしています。敷地については、同法19条が17条を準用しているので同じ規律となります。
上で括弧を付けて引用した条文の文言が分かりにくいと感じるのは私だけでしょうか。
というのは、「形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」という語句は、「形状」と「効用」の少なくともいずれか一方について「著しい変更を伴わないもの」を除外する趣旨と理解するのが素直な解釈であると私には思えます。
この解釈が正しければ、「形状」及び「効用」の双方について「著しい変更を伴うもの」だけが、狭義の変更に該当することになります。
ところが、一般的にそのような解釈は採られていません。文献を見ると、「形状又は効用の著しい変更を伴うもの」が狭義の変更に該当するとされています(水本浩他編『基本法コンメンタール マンション法〔第三版〕』36頁、鎌野邦樹他編『マンション法』68頁同旨)。狭義の変更から除外されるのは、「形状及び効用」のいずれにも著しい変更を伴わないものであることになります。
なぜ、このような解釈になるのか解せません。
「性質Aを有しない者の集合甲」と「性質Bを有しない者の集合乙」があるときに、「甲又は乙」といえば、「性質Bは有するが、性質Aを有しない者」も「性質Aは有するが、性質Bを有しない者」も含まれることになるでしょう。それと同じだと私には思えます。
もしも、立法者が「形状又は効用の著しい変更を伴うもの」をもって狭義の変更とすることを意図したのであれば、「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴うものに限る。)」と規定するか、より厳密に書くなら「共用部分の変更(その形状及び効用の一方又は双方の著しい変更を伴うものに限る。)」とすれば良かったのではないでしょうか。
条文の分かり易さの観点でやや残念な立法であるように思います。