管理規約は,区分所有者の団体の自治規範ですから,規約で義務を課すことができる範囲は団体の構成員である区分所有者のみであることが原則です。たとえば,規約に定められた管理費の支払義務を負うのは区分所有者のみです。もちろん,区分所有者が区分所有権を失ったからといって既に負った管理費の支払義務を免れるものではありませんが,区分所有者以外の第三者(たとえば区分所有者の親族)に支払義務を負わせる規定を規約に定めても無効です。
しかし,区分所有法は,「建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法」について,「占有者」(区分所有者以外の専有部分の占有者)に対し,区分所有者が規約に基づいて負うのと同一の義務を負わせています(区分所有法46条2項)。したがって,「使用方法」については,賃借人等の占有者も規約に定められた義務を負うことになります。
また,区分所有法上の管理者は,区分所有者であることを資格要件としていませんが,規約で定められた管理者の行為を行う義務を負います(区分所有法26条1項)。したがって,区分所有者でない者が管理者に就任した場合,その者は区分所有者でないにも関わらず,規約に定められた管理者の義務を負うことになります。
もっとも,通常は,規約で理事長が管理者と定められており,かつ理事長その他の役員の資格として,組合員であることが要求されていますから(標準管理規約38条2項,35条2・3項),区分所有者でない者が管理者となることはありません。すなわち,管理会社等の第三者を管理者として選任しているような例外的な場合に限って,規約上の管理者の義務を「区分所有者以外の者が規約に基づく義務を負う例」として,挙げることができます。