免責の効果は保証人等の「破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利」には影響を及ぼしません(破産法253条2項)。したがって,破産者が免責の決定を受ける前に専有部分の売買が行われている場合,破産者の特定承継人が区分所有法8条に基づいて負う債務については破産者が免責を受けても影響はありません。
しかし,免責決定後に売買が行われた場合も同様にいえるかは疑問の余地があります。免責の効果について破産債権は自然債務として残るとする見解もありますが,消滅するとする見解も有力です。区分所有法8条は,過去の「区分所有者に対して有する債権」について特定承継人に債務を負わせているのであって,免責によって債権が消滅したとすれば,もはや承継の時点で「有する債権」が存在しないとも考えられるからです。
この点は,次のように考えられるのではないでしょうか。
区分所有法7条により管理費に認められた先取特権は,別除権として破産法65条1項により破産手続と無関係に権利行使ができます。だとすれば,先取特権の被担保債権としては免責決定にも関わらず,破産者に対する債権は存続しており,その後に専有部分の売買が行われたときには,特定承継人は,この債務と同一の債務(ただし,特定承継人は破産手続と無関係なので破産法上の制約はない)を区分所有法8条により負担することとなる,と。